第1回全国史学系サークル研究発表大会
開催概要
2026年2月25日(水)
中央大学多摩キャンパス3551,3552教室
10:00 - 18:30
開催理念
学問というのは、今まで見えなかった場所に光を当てることを指す。それは個々人にとっての新境地であって、時に人類にとっての新たな視点となり得る。
だが、それが優れているか否かを判断するのはその研究が生まれた時代に生きている人間にとっては難しいことであって、そもそもそれを測る基準などほぼ存在しない。そうであるにも関わらず、我々は学問に対し無意味な優劣を見出し、その価値を貶めてきた。
この会は比較的軽視されがちな「歴史」を扱う史学系大学サークルの興隆を願うものであり、同時に学び習うという、優劣を問うものではない学問の形の再発見を望むものである。
この「学び習う」という点において、また学問の優劣を指し測るものがないという点において、どんな駄作であっても価値はあると胸を張っていきたい。
発表プログラム
第1会場
# 東京市政 # 官民協調
昭和戦前期の第一線行政事務刷新運動
第一線行政事務刷新運動では「事務の親切化」が求められた。「事務の親切化」とは昭和12年の閣議決定「第一戦行政事務刷新」によって提起された官民強調を推進するために、東京市の側から求められた行政事務の改革であった。そこでは、行政事務担当者が市民の要望に応えて親切丁寧な対応を行い、市民もまた無理難題を押しつけず、親切心を涵養することで、官民協調による円滑な行政事務を推進し、大衆に開かれた「市民本位化」が目指された。
# 第一次甲相同盟(北条・武田氏)
戦国期「同盟」に関する考察- 第一次甲相同盟における政治的関係を中心として -
戦国大名の間では数々の同盟が結ばれた。そのなかで最も軍事的に強固な同盟として攻守軍事同盟があげられ、今川家·武田家·北条家の間で結ばれた駿甲相三国同盟が、規模·期間からして最も代表的な同盟とされる。特に軍事的に機能したのが、武田家と北条家の間で結ばれた第一次甲相同盟であった。本報告では、第一次甲相同盟における両家の政治的関係を検討し、戦国大名の同盟期間中の関係を考察するための手がかりを得ることを目的とする。
# 日羅関係 # 日本外交史(古代)
養老年間の日羅関係に関する一考察
養老年間の日羅関係は通説的理解では第Ⅱ期とされ、不穏なる羅唐関係の影響により日羅関係が未だに良好なる時期とされている。しかしながら、8世紀における新羅使の迎接、すなわち公使宴会儀礼の比較より養老年間の迎接は日本側が特に消極的であり、関係が悪化しているよるに見做すことができる。これら養老年間の日羅関係の悪化を明らかにすることで、外交儀礼の運用面と政治の実際面、この両点の連動性を強調するとともに、日羅関係の良好から悪化への一途をたどるとする通説的理解へ疑義を呈したい。また外交儀礼の比較より新羅使迎接における公使宴会儀礼が果たした役割を特に賜禄との関係より検討したい。加えて、東部ユーラシア論という最近顕著なる対外関係史の説と結びつけることで、聴衆に新視点を提示したい。
# 文化革新 # 技術革新
技術の進歩に対する抵抗の歴史
技術の進歩そしてその普及は人々の生活に大きな影響を与える。しかし一方で、失業、環境問題、文化の破壊などのデメリットもあり、それらを人はどう批判・抵抗してきたのかを、ラッダイト運動、明治維新、ユナ・ボマー事件の3つにおいて考察しようと思う。
# パラグアイ # ナショナリズム
パラグアイ戦争を通じた先住民の「国民」化-19世紀の新聞から見るラテンアメリカ的ナショナリズム-
本発表では、19世紀パラグアイにおけるナショナリズムの形成を、当時の新聞表象を通じて検討する。とくにパラグアイ戦争期において、先住民が白人エリート主導のナショナリズムの中にいかに位置づけられ、「パラグアイ国民」として再編成されていったのかを分析する。そのうえで、ナショナリズムの構成要素に着目し、ラテンアメリカのナショナリズムが先住民的要素を必要とする背景について考察する。
# キリスト教 # 修道会
〈修道士的男性性〉論・序説:教皇改革以降の修道制の思想にみる司牧・メランコリー・文化的記憶
本報告では、教皇改革において形成されシトー会などへ受け継がれた男性性の類型を〈修道士的男性性〉とし、それに基づく生政治の技術論の歴史と思想を論ずる。〈修道士的男性性〉の重要な構成要素である「戦士」「司牧者」「魂の医師」という表象が現れてくる背景としてのメランコリーに言及し、さらに、〈修道士的男性性〉を支えるひとつの技術として歴史叙述による集合的記憶の形成があったという見立てを提示する。
第2会場
# 日本海軍 # 旧憲政下日本政治
軍縮条約下における艦隊派の政治関与
ロンドン海軍軍縮条約が締結されると、海軍では統帥権干犯問題を皮切りに海軍省を中心とする条約派と海軍軍令部を中心とする艦隊派の対立が激化した。そんな中、条約締結に反対し、軍縮条約破棄を目指す軍令部を中心とする艦隊派は、次第に政治や世論への影響力を増したことで海軍は「政治勢力化」を果たした。本報告では、 「艦隊派」の影響力が強まると共に海軍がどのように政治や世論に関与したのかを考察する。
# 吹奏楽文化 # 旧憲政下日本政治
政府と国民との間にあった吹奏楽
本発表では戦前期日本における政府や民間団体の音楽活動のうち、特に吹奏楽という分野に注目する。軍楽に対する当時の政府の認識、日中戦争を境にした吹奏楽の変質、国民にとっての吹奏楽とはどのようなものであったかを考察していく。
# 市町村合併 # 埼玉県
新市連帯運動の展開
1950年代、昭和の大合併と呼ばれる市町村の合併が全国的に推し進められた結果、農村的な経済構造を持ちながら市制施行した「新市」が多数誕生した。新市の多くは農村的な部分と都市的な部分が混在しており、その矛盾が財政難を引き起こしていた。そこで新市は課題を共有し、合同で解決すべく、県を相手に新市連帯運動を起こした。本報告では、それが競輪開催権獲得運動と結びつきながら、埼玉県を震源に全国化していく展開を明らかにする。
# 葬祭文化(日本)
殯の従来の諸説に対する一考察- 臣下の殯を中心に -
日本には殯と呼ばれる喪葬儀礼が存在していた。殯とは、故人の遺体を埋葬前に数ヶ月から数年安置し、その前で挙哀や誄など様々な儀式を行うものである。今回の報告ではまず殯が行われてきた理由について臣下の殯という観点から考えていきたい。さらに、そこから論を進めて、殯がどういうものであり、何故終焉したのかについてまで触れていきたい。
# 長崎郷土史 # 記憶 # 史学史
「忘れえぬ死者」と「創られた伝統」
長崎におけるお盆の特殊性について「史料」を用いて、考察する。その中で「死者」が我々の生活に与えている影響についても考えてみたい。そして、我々が「伝統」と認識している事物は本当に「伝統」といえるのだろうか。常識を疑うという点から考察していきたい。
# アイヌ民族 # アメリカ先住民
お雇い外国人ホレース・ケプロンは「アイヌモシリ」植民地化にどう影響したか
1871年、明治政府は当時アメリカの農務長官であったホレース・ケプロンを、北海道「開拓」のために1875年まで雇った。ケプロンは1852年から1853年まで、米西戦争直後のアメリカ南西部の先住民の移住を監督していた。本発表は、ケプロンの自伝から、その経験がいかにお雇い外国人時代の行動に影響したかを探る。